映画を観ていない方に説明すると、ここは『海』が最期の夜に老人と青年に見せる過去の記憶を表現すると同時に、神秘的な「生(せい)」の力みたいなものの美しさも感じさせるとても重要なシーンです。

まず、海と月明かりの映像。
これは、VFX担当の横小路さんへ拍手の本当に美しい映像です。この映像を作った元の素材は手ぶれ満載の朝の海の映像でした。それがこんな風に見事に夜の幻想的な海へ、生まれ変わりました。何度みても美しい…ちなみに映画の中で、数秒程、本物の海が月明かりに照らされている映像も出てきます。どちらが、本物か比べてみて下さい。

そして、海の中。月が海の波とディゾルブするのをきっかけに、映画の画面はどんどん海の底へ沈んでいきます。沈むにつれて、聞こえて来る水のコポコポと言う柔らかな音…っという感じです。
これは、海の映像の輝度を分析しながら、そこに違う映像を反射させている?ということ。
だから、とてもリアルに、海の中に映像が照らされて出てきたように見えます。水って本当に綺麗ですね…



そして現れるのが、これらの映像です。
企画当初、この映像はアニメーションで手書き風に表現しようと思っていました。
ですが、実写で表現することに挑戦してみようということで、水槽の水や布、紙やプロジェクター、クリスタルや鏡、扇風機など色々な物を使って実験し、いかに海中で見ている記憶のように表現できるか試行錯誤を繰り返しました。それでも、何か映像が面白くなかったので、それをさらに横小路さんに水の反射を加えて頂いたところ、大正解!光と海のあぶくが集まってできたような、少しアニメーション風の面白い映像になりました。かなり興奮する作業でした。実験と共同作業を繰り返し、いろいろな新しい表現に出会えるのは、映像製作の醍醐味!
これからも「それ、いい!」って言いあいながら和気あいあいと楽しく作っていきたいなあ。
そういう現場や職場が作れたら理想的ですね。
次はそろそろ映画祭のお話です。お楽しみに。